平成20年7月14日(月)・15日(火)


広島県呉市の小中一貫教育の取り組み
今、なぜ小中一貫なのか?

〈子どもの実態は?〉





中学校で低下する学習意欲
中学校で急激に増える「いじめ」「不登校」
    いじめ→3.5倍
    不登校→2.4倍    H17年度調査(呉市)
予想以上に大きい中学校入学時の不安
「先生はこわくないか」「上級生にいじめられないか」
「同級生とうまくいくか」「勉強はわかるか」等
〈教職員の意識は?〉
小学校
(学級担任制)


中学校
(教科担任制)
・固有の文化のちがい
・「子どもたちがこれまでどういう勉強をしてきたのか」
 「これからどういう勉強をしていくのか」という視点の弱さ
・小学校の教職員は小学校のことだけ、同様に中学校の教職員は
 中学校のことだけ考えておけばよいという意識

小学校から中学校へ子どもの成長は連続しているのに教える側の意識はうまくつながっていないのではないか。
小学校と中学校の9年間で「指導内容」と「指導方法」に一貫性を持たせる。
小中一貫教育
ねらい
○義務教育を修了するのにふさわしい学力と人間関係力の育成
○中学校入学時の不安の解消と自尊心の向上

何をどのように一貫させるのか?
五番町小学校、二河小学校、二河中学校の3校は平成12年度から文部省(当時)の指定を受け、研究開発学校として、小中一貫教育の研究に7年間取り組んできました。

☆子どもの発達に即して9年間を4(前期)・3(中期)・2(後期)の三期に区分
小学校 中学校
1学年 2学年 3学年 4学年 5学年 6学年 7学年 8学年 9学年
【前期】
〈具体物を使った思考〉
【中期】
〈具体と抽象の混在時期〉
【後期】
〈抽象的思考〉
学級担任制  /  教科担任制

☆小学校から中学校への円滑な移行を考えた指導内容と指導方法の改善
〈算数課題学習〉○中学校数学教諭と学級担任でのTT(年間20時間)
  5・6学年
〈中期選択教科〉○小学校教諭と中学校教諭でのTT(年間20時間)
  5〜7学年
〈英会話の時間〉○ALT、JTE、学級担任でのTT(年間20時間)
  5〜7学年
〈部分的教科担任制〉○専科教諭並び5・6年担任で得意とする教科を担当
  5・6学年
〈小中兼務辞令教諭による小中相互乗り入れ授業〉
   ○小学校→中学校(7学年理科、9学年社会)
   ○中学校→小学校(5・6学年の英会話の時間、国語、算数、体育)
※TT(ティームティーチング)ALT(外国語指導助手)JTE(日本人英語科教諭)

今後の展望
呉市立小学校(56校)、中学校(28校)のすべての学校で小中一貫教育を実施します
(平成18年度から着手)
小中一貫教育
物理的な
条件
地理的に離れている小・中学校 同じ敷地内、隣接する小・中学校
小中一貫教育校
教育課程
教科・領域
 ○9年間を一貫したカリキュラムづくりに取り組む
 ○まずは特定の教科・領域から取り組み、全教科・領域をめざす
  ※小・中学校の接続部分(5・6・7年)に焦点をあてた取組の充実
めざす
子ども像
小・中学校9年間を通して同じ目標
児童・生徒 計画的な交流を行う 生活を共にする
教職員 小・中学校の教員がそれぞれ出向き研修を深める 一つの学校の教職員として共に協力して子どもを育てる
学校経営 小学校と中学校がそれぞれで経営 一つの学校として経営

 28の中学校区のうち、小学校と中学校が同一敷地内また、は隣接している中学校区においては、「小中一貫教育校」の設置について検討を進めています。
 平成18年度現在、「小中一貫教育校」の設置を検討しているのは、次のとおりです。
   (長浜中学校区、横路中学校区、警固屋中学校区、二河中学校区、蒲刈中学校区)

〔小中一貫教育の課題と展望〕
 小中一貫教育校に対しては、「小学校の最高学年として6学年の活躍の場がなくなる」とか「小学校から中学校へと入学する時の人間関係に変化がなくなる」
などの意見もありますが、どんな新しいシステムも完璧なものありません。
 小中一貫教育には、まず教師の意識が変わり、次に子どもが変わり、保護者が変わり、学校が変わるという大きな力があります。
 小中一貫教育は、それ自体が目的ではなく、今日の義務教育を改善していくための具体的な手段であり、21世紀を生きる子どもたちにより質の高い教育を行っていくための有力な方法であると考えています。


アメリカで始まった「ゼロ・トレランス方式を」日本で始めて導入。
規範意識を育てる
岡山学芸館高等学校 森靖喜理事長兼校長
クリントン大統領が導入を呼びかけた教育方針
 少子化の影響などにより、定員割れを起こす私立高校が多いなか、岡山にある岡山学芸館高等学校(森靖喜校長)は、ゼロ・トレランス方式を日本で初めて導入するなど様々な改革が実を結び、出願者数が3年連続で増加している。
 『落ち着いて安心して通える学校』という、地域社会からの評価が高まる中で、レベルの高い中学校の受験が増えてきているのである。
 出願者数の増加、出願者の質の向上など学校の評価が高まるた理由のひとつとして日本の伝統文化に根ざした同校の人格教育をあげることできる。
 勉強ができるだけではなく、挨拶など礼節をわきまえた人間を育てようというマナー教育の徹底が生徒数の増加に結びついでいるといえる。このマナー教育に重要な役割を果たしているのが「ゼロ・トレランス方式」だ。
 全国から注目が集まっている岡山学芸館高校の「ゼロ・トレランス方式」を紹介する。
 「ゼロ・トレランス方式」は1990年代にアメリカで始まった教育方針のひとつとして知られている。トレランスとは寛容の意味で、寛容がゼロ、日本語では「不寛容方式」「毅然とした対応方式」と訳されている。
生徒の自主性に任せる放任主義と対角をなし、細部にまで罰則を定め、違反した場合は速やかに例外なく処分を行なうやり方である。アメリカでは94年、連邦議会が各州にこの方式の法案化を義務づけ、クリントン大統領が全米に導入を呼びかけたことで広まった。
 日本では岡山学芸館高校の導入が最初で、全国から視察団が訪れている。文部科学省でもプロジェクトチームを組み。ゼロ・トレランス方式の調査研究などを開始し、教育現場への導入を検討しているところだ。

駄目なことは駄目と伝えることが「生き方の規範」教育
 同校がゼロ・トレランス方式を取り入れたきっかけは、もう一段の学校教育向上、レベルアップであった。98年前後、5〜6%あった退学者に対し、「退学者ゼロ作戦」を開始。教員の指導力アップの研修とともに『ほっとルーム』と名づけたカウンセリングルームに臨床心理士を含む相談員を配置、生徒たちの教育相談にいっそう力を入れるようになった。問題を起こした生徒の背景を調査するなかで、社会全体の教育力の低下、父性・母性の欠格による家庭教育力の低下、保護者の価値観の混乱・自信喪失などの問題点浮き上がってきた。
 森校長は、日本社会のモラルの低下をみるにつけ、古くから日本にある、礼節・礼儀、清明・誠実、忍耐、卑怯を憎む心、自然への畏怖心といった日本人の伝統的精神・価値観を大切にする人格教育の必要性を痛感したという。そういったなかで加藤十八氏の著書『ゼロ・トレランスー規範意識をどう育てるか』に出会い、「駄目なことは駄目」と伝える、同校オリジナルの「ゼロ・トレランス」を作る取り組みを始めた。
 森校長は「生徒指導において駄目なものは駄目、やらなければならないことを理屈なしにやるということが大事。朝起きたら『おはよう』というのは理屈じゃない、この当たり前のことができないのがいまの日本。戦後60年の日本の教育は先生も生徒も親も子も皆平等と教えてきた。しかし、知識・価値観というのは高いところから低いところへ流れていく。縦線教育をきちんとやって伝統的価値観を次世代に継承するのが教育の役目」と話す。

生徒の全体像を理解できるソフト「シームス」を活用
 導入の過程では、段階指導の枠組み作りに時間を費やした。同校では守るべき規範を1から5までに分けて指導している。レベル1には「靴のかかとを踏まない」「通学には規定の靴をはく」など同校の生徒として守って当たり前の規範66項目を定めた。その結果、01年には生徒態度が飛躍的に向上したという。
 携帯電話に関しても、休み時間は使っていいことになっているが、授業時間に使っていたら即刻没収。定期考査の際、ポケットに携帯電話を入れることが発覚した場合、全教科零点という厳しい処罰となっている。
 同校におけるゼロ・トレランス導入の成功要因として、「シームス」という同校が開発したオリジナルソフトの活用も大きい。生徒一人ひとりの出欠状況、日々の授業の様子、成績などすべての情報が入力され、教員たちが生徒一人ひとりの情報を共有することができるシステムが構築されている。
 教員たちが生徒について共通理解をもったうえで、愛情に満ちたきちんとした指導を行ったことがつながったのだろう。ゼロ・トレランスは処罰のためではなく、予防のためのシステムであり、人間教育の基礎と同校は位置づけている。

生徒・保護者に愛校心・誇りが定着学力向上へ
 ゼロ・トレランスの効果について「生徒が自分たちの学校に誇りをもてるようになった」と話す。指導する側も、指導すべき項目が明文化されているので、指導にぶれがなくなり、自信をもって指導できるようになったという。
 「最初は息苦しいと感じる生徒もいたかもしれないが、やがて礼節は大切なものだと理解してくれるようになってきた。この方法は学校生活3年間で社会に求められるマナー、立ち振る舞いの美しさ、礼儀正しさ、日本らしさを身につけてもらうための方法です。」
 当たり前のことができなくなっている現代の日本において、駄目なものは駄目という確固とした指導方法は潔い印象を受けた。


広島県府中市で進める小中一貫教育

小中一貫教育の導入の理由
(1) 小学生が中学生に入学した段階で不登校生徒が増加する傾向があることから小中の関係を促え直し、接続の充実を図る必要があると考えた。
(2) 小学校5年生と中学校2年生を対象に、広島県教員委員会が実施している「基礎・基本」定着状況調査などの結果をみると、小学生と中学生の数値に大きな開きが出る項目がある。このことから、義務教育9年間を1つのまとまりとして、学力の定着を図る必要性があると考えた。

小中一貫教育の基本原則

小中一貫教育の特徴
(1) 市内全ての小中学校で、学習指導要領に基づき、9年間を見通した中で、すべての子どもの可能性を最大限に伸ばす教育を進める。さらに、小学校と中学校とが協力して、教科学習・生徒指導・学校行事等について、9年間で達成すべき目標を設定して取り組む。
(2) 既存の施設を活かし、連携型(小学校と中学校とが離れている)・併用型(小学校と中学校とが隣接していたり、離れたりしている)・一体型(小学校と中学校とが同じ敷地にある)の3形態で実施する。


府中市の小中一貫教育を推進してこられた目崎仁志教育長をはじめ小川美樹指導主事、府中市立府中小学校・中学校(府中学園)坂本紀之校長のインタビュー記事です。
Q. あくまで学習指導要領をベースに、全市・全教科で小中一貫教育を実施するという選択された経緯を教えてください。
A. 目崎仁志教育長
まず、平成15年に小中一貫教育をやりますよと公にしました。しかし、どのように実施するかについて悩みました。教育特区や研究開発校制度となると、学習指導要領をいじってもよいですよということですが、府中市は学習指導要領の枠内で何ができるかを考えてきました。
こうした基本的な方針を平成15年の市議会で発表し、それが全国紙で大々的に報道されると、翌日から全国の10数箇所の学校から、問い合わせのお電話がありました。このことで、どの地域でも小中学校の接続に関して同じ悩みをかかえているのだと思いましたし、何より学習指導要領の枠内で進めようとする選択に間違いはないと確信できたのです。
全市で実施する前に、モデル的に学校を指定してやったらどうか、という意見もありました。ただ、府中市は平成15年で小中学校が16校(うち中学校が4校)平成16年は市町村合併で小中学校数が19校(うち中学校が5校)に増えたのですが、これくらいの規模であればやっていけると思いました。
全教科で取り組むということについても、ある特定の教科に限定するとそれに関わる先生方も絞られてしまいます。絞り込んでしまうと、いわゆる温度差を生じる可能性もありますし、やはりみんなでやっていこうという気持ちが大事だと思うのです。それで、全市・全教科で小中一貫教育に取り組むことを決めたのです。
Q. 小中一貫教育を推進していくうえで、何が最も大きな問題だったのでしょうか。
A. 目崎仁志教育長
小学校と中学校の文化の違いです。まず授業展開が違う。例えば、小学校では問題解決型の授業展開をしていても、中学校では教師主導型の展開になっている。これには小学校の先生も中学校の先生もお互いショックを受けていました。小中それぞれの教科書についても、初めて開いてみたという先生も多くいました。
それと、例えば中学校の先生が小学校へ授業に行くと、本来その中学校の先生が受け持つ中学校の授業が空きますので、補充の人員を確保しなければなりません。この予算的・物理的な面の対応に苦労しました。
Q. 小学校、中学校の文化の違いをどのように乗り越えたのでしょうか。何か秘訣はありますか。
A. 目崎仁志教育長
小中の文化の違いを乗り越えられたかと尋ねられたら、ノーとしか言えないですね。それでも、小と中の教師間の交流が増えれば増えるほど、お互いが良い意味で特別な存在でなくなっています。これは大きなステップを踏んでいると感じています。
可能な限り顔を合わせ、声を聴き、共に汗を流すことが重要だと思います。府中市の取り組みも現在進行形で、小中の文化の違いを克服しきれません。どうすれば解決できるのかという知恵が、現場から出てきています。解決のための努力をしつつあります。
Q. 府中市の小中一貫教育カリキュラムの作成において、小中の先生はどのように協業したのでしょうか。
A. 小川美樹指導主事
小中の先生方が、小中の学習指導要領を調べ、教科書を聞きながら作業しました。中学校の先生が小学校の教科書を開き、過去にまでさかのぼって調べるうちに、新しい発見がたくさんあったようです。例えば、中学校数学で、ある単元は小学校の教科書のここにつながっていたのか、という発見がありました。知的好奇心が満たされるこうした発見が重要なのです。知的好奇心が満たされると、次の課題も解決しようという意欲がつながりますから。
A. 目崎教育長
大学の先生にもご参画いただいて進めてきましたが、大学の先生から「この企画は面白い」と言われたり、「無駄ではない」と言われたりすると励みになりました。大学の先生方の支援も重要でした。
Q. この春に開講した小・中学校校舎一体型の「府中学園」の様子を聞かせください。
A. 府中市立府中小学校・中学校(府中学園)坂本紀之校長
「府中学園」が開講し、2週間あまりたちましたが、中学生が小学生を見て、思わず「かわいい」という言葉を発したり1年生の児童をおんぶしてあやしたりしている光景を見かけました。小学生が落とした水筒を、中学生がさりげなく渡す場面もありました。中学生に思いやりの心が培われてきていると感じています。
いっぽう小学生が中学生を見るときは憧れのまなざしをもって見ています。部活動や小中合同の活動場面においても、中学生の「凄さ」に感心している小学生の姿が見られます。
中学校の先生は小学生の先生の表情の豊かさを学ばなければならないと思います。2週間あまりですが、中学校の先生の表情が豊かになってきていると感じています。そして、小学校の先生も中学校の先生も、9年間は「うちの子」という意識で指導していこうと話しています。これが、小中一体型校舎による小中一貫教育の最大のメリットだと思います。
A. 目崎教育長
小中一貫教育のキーワードは「つながり」。今までは小学校6年間と中学校3年はそれぞれ別でしたが、これから小中合わせた9年という枠組みで考えていきます。小中一貫教育では、小学校1年生は「9分の1」年生であり、中学校1年生は「9分の7」年生なのです。
これまでは、小学校が終わればあとは中学校へ任せますという意識だったと思いますが、これが先生の意識の壁をつくってきました。しかし、これからは意識の壁を取り払うことが
できると思っています。



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